本日は映画「flow」を観てまいりました。
キービジュアルから神秘的で、精神的なお話かと思っていましたが
実際にはかなりハードな冒険物でした。
何気なく森の中で暮らしていた一匹の黒猫が
ある時、大洪水に巻き込まれ 命からがら逃げ出します。
逃げた先の場所も徐々に海に沈み始めて
成り行きで通りがかった船に乗りこみ冒険に出るというお話。
ここまでのハラハラドキドキは想像しておらず
息をつく暇もない怒涛の展開の連続で、猫の安否が常に気がかりになる体験型の映画でした。
他の動物もですが、この黒猫がとても可愛らしく
動きのそこかしこにリアルな猫らしさがあります。
制作スタッフが間違いなく猫好きであるのを感じました。
テーマとしてはおそらく「ノアの方舟」を強く意識しているように見受けられました。
原因もわからず沈みゆく世界の中で成り行きで様々な動物が船に乗りこみ
それぞれがそれぞれに本能のままに動くため、争いも絶えないという
生物的なリアリティの描写も印象的です。
ラストまでの流れがかなり印象的で
世界のほとんどが突然沈みゆく洪水の原因もわからない中
ある時急に海水が引き始め
沈んでいた森や大地が浮かび上がってきます。
不自然に沈んだ世界が、不自然に元に戻っていき
そこかしこに人間の建てたであろう建造物が乱立する割に人は一切登場しない。
ラストは苦難を乗り越えた猫、カピバラ、犬、ワオキツネザルの四匹が
陸に乗り上げ死にかけているクジラのような神秘的な生物の前に集まり
それぞれが寄り添いあって終わるという明らかなメッセージ性を感じさせる
終わり方でした。
陸が戻ってきた世界で無事生きられる四匹と、
陸がない世界ではあれほど優雅に生きていた鯨との対比。
どちらかにとって理想的な世界は
どちらかにとって不都合極まる世界でもあるのだと感じました。